2011.10.23   K2Couple No.0337

稲子岳
いなごだけ(長野県)
2,380m
   中山 2496m 稲子岳 2380m ニュウ 2352m
雨上がりの南壁左カンテ登攀

コース最大標高差 : 400
コース累積標高差(+) : 835
コース累積標高差(−) : 835
コース沿面距離 : 10.4 km
行動時間 : 10'00"
* 距離と累積標高差は GARMIN GPS data です  終了点にて

  4:25 = 藤岡IC/上信越道/下仁田IC = 内山峠 = 6:15 八千穂高原レストハウスふるさと 6:30 = 6:40 白駒池P

 白駒池P7:00 ... 7:15 白駒池(白駒荘)... 7:50 高見石小屋 ... 8:50 中山展望台 ... 9:10 ニュウ分岐 ... 9:20 中山峠 9:25 ...

 10:35 南壁取付き 11:00 ... 14:20 終了点 ... 14:40 【L】 14:55 ... 稲子岳 ... 15:35 ニュウ 15:45 ...

 16:10 稲子湯分岐(しゃくなげ尾根)... 16:50 白駒池青苔荘 ... 17:00 白駒池P

 白駒池17:15 = 17:50 八峰の湯 19:25 = 内山峠 = 下仁田IC/上信越道/藤岡IC = 21:10


北八ヶ岳松原湖温泉 八峰の湯 (¥500)

  【1ピッチ目 】 30m V


 正面のフェースを左上の凹角を目指して左上気味に登る。
 フェースには紅葉した草が散らばっており、綺麗である。
 クラックが発達しているので、カムを使って登ることができそうであるが、リングボルトやハーケンが打たれている。

 フェースの右側から取付き、1本目のリングボルトにクリップした後、取付きの目印になっている赤いハーケンにランニングを取り、その
 少し上から左にトラバースして凹角に入っていった。
 フェースは取付きから見た感じより立っているが、クラックが多く、ホールドとして使うことができるので、気持ちよく登ることができる。
 凹角もクラックが発達しているのでカムを使うことができるが、ここにもハーケンが打たれていた。
 凹角を抜けた後はカンテの左側のバンドを斜上していくとボルトが3本打たれている終了点があった。
                                                                              --- たっくんmemo ---


凹角内のフェースを登る。
出だしのフェースでリングボルトにランナーをとって、次の赤いピトンにヌンチャクを掛ける。

カンテの左に斜上する簡単なラインに見えるけど、取付きの壁はホールドが少なく割りと立っていていやらしい。
が、順調にクリアー。


終了点から振り返ると、東側がガレた天狗岳と少し南に硫黄岳が見えているのですが、生憎どちらも山頂は雲に隠れています。
天狗岳からやってくるガスの流れが、まるで生き物のようです。

しかし下を見ると綺麗な黄葉が広がっている。
東の町には薄日が射しているようでした。

シラビソの樹林の中に、しらびそ小屋が見える。

 リードの本間さん
 赤いピトンにセット ▲ おいちゃんです  フェースを斜上
 階段状 ▲ にっ  赤いピトン
 カンテ左を登る ▲ 終了点  落葉松と南壁

  【 2ピッチ目 】 25m V


 ここでルートは右に曲がり、カンテに向かって登っていく。
 顕著な凹角から取付き、オープンブック状の岩へと続く。
 このピッチもクラックが発達しているので、なるべくハーケンを使わず、カムでランニングをとって登ることにした。
 オープンブック状の岩は一手登りにくいところがあるが、両側のフェースに手を突張ったりしながらムーブを工夫して越える。
 その上は階段状のリッジとなり、簡単に登ることができる。
 上に行くにしたがって岩が脆くなり、浮石に注意が必要である。
 終了点の手前から瓦礫の連続となるので、落石を起こさないよう神経を使う。
 ボルト2本の終了点でピッチを切った。


V字状のディエードルから階段状のリッジへ。
特に問題はないが、終了点近くは細かい浮石多し

 見守る師匠     ▲ 凹角を抜けて階段状リッジへ          ビレイヤーおいちゃん
▲▲▲ おいちゃんに続いて、凹角からリッジに出るはらっぱ

問題ないピッチの筈だった。
おいちゃんの落とした石が、はらっぱの顔面を直撃した
『ラク〜』というおいちゃんの声を聞いて、上を見上げた瞬間だった。
ウ〜
見上げなければ、ヘルメットに当たっていたのに。

翌日から左目周りがはれて青アザパンダになり、人前に出られなくなった。
骨には異常がないようだけど、痛くて触れない。
近所の人の視線を感じる 『旦那にやられたんかい』 domestic violence
『そうじゃないんだけど、そんなとこかな』 当たらずとも遠からずってか。

 ラク〜
                       ▲ アクシデントにもめげず、果敢に登るはらっぱ
                             ▲ 壁を飾る明るい木々と紅葉
 凹角を登るはらっぱ       ▲ 見晴らしの良い終了点から天狗岳

  【 3ピッチ目 】 25m V


 3ピッチ目はアルパインらしい岩であり、階段状の岩から始まる。
 正面のフェースは左側の傾斜の急な幅の広いクラックも登ることができそうに見えるが、今回は右側に寄り、右側の大きな壁に沿ってチム
 ニー状のところを登ることにした。
 チムニーの中は、傾斜は急であるがホールドが豊富なので、ムーブを工夫しながらクライミングを楽しむことができる。
 チムニーを抜け、左側から岩を回り込み、傾斜が落ちた階段上の岩を登ると終了点となる。
 このピッチもカムが使えるクラックが豊富にある。


テラスから右側のチムニーを抜けてリッジに出る気持ちの良いピッチ。
下から鹿の鳴き声が響く。
高度感も出てくる。

 チムニー           階段状スラブ                リードを見守るビレイヤー
 チムニーっぽい              カメラマン大活躍
 写真撮りまくりピッチ             ▲ 迫力も出てきたし

『ビレー解除』 『どうぞ〜』 リードからの合図も風で途切れ途切れ。
チムニーは簡単だった。

周りの壁が紅葉に染まり、基部のカラマツがずいぶん下に見える。
自分を取り巻く空間と高度感にシビレて、アルパイン気分が盛り上がる。

この辺りの岩は不安定。
大き目の岩でさえ、グッと力をかけると動いたりする。
そんな岩は動かない方向に力を掛けるんだよ、と師匠がブツブツ。

 3P終了点を見上げて
                          ▲ 超開放的な中間テラスで v(^_^)v

全体的に楽しく登れるピッチでしたね。
開放感たっぷりだったし。

ピッチの終了点は、背当て用大岩があって寄りかかれるのでラクチン。
まさか、後ろにひっくり返らないだろうね。

見上げるリッジの左は、赤い岩のガラガラ斜面になっています。
その下は落石の巣のようになったルンゼに落ち込んでいる。

 終了点テラスにて

  【 4ピッチ目 】 40m W


 終了点から見上げると、岩がガラガラしたリッジの先に恐竜の背のような岩塔が二つ見える。
 手前がルートの核心の4ピッチ目の岩塔で、奥が最終ピッチの岩塔である。
 ワクワクするような景色である。
 リードは浮き石の連続するルートを避けて、終了点のある岩を直上したが、セカンドは岩を左側から回り込み、浮き石を落とさないよう注
 意しながらガレ場を登った。
 念のため、一人が登りきってから次の人が登るようにした。
 岩塔への取付きは、右側の凹角から取り付くルートと、左側から岩の基部を回り込むルートが取れそうであるが、今回は右側から取り付く。
 凹角は傾斜がきつく、慣れていないとちょっと難しいかもしれない。
 クラックにフットジャムを利かせて登ることもできるが、クラックの右側のフェースのスタンスを上手く拾って登ることもできる。
 凹角を抜けると、ルートの核心である小垂壁が待っていた。
 ホールドが多いのでどこからでも登れそうに見えるが、フェースの左側のクラックと正面のクラックのダブルクラックを使って登った。
 お助け紐もあるが、二つのクラックを上手く使えば、お助け紐に頼るまでもない。
 ここを抜けたところが岩塔の頭である。
 このピッチもカムが使えるクラックが十分ある。
 高度感があり気持ちのいいところであるが、今日は強風が吹き付けているので辛い。
 ここから最終ピッチの岩塔を避けて右側のガレ場から稜線まで登ることもできるが、せっかくなので強風に負けず最後まで登ることにした。

ガラガラの浮石斜面は足を乗せるだけで崩れるので、本間さんはリッジ上をリードする。
リッジを少し登ってから凹角に入り、バランスをとって登ります。
最後に、核心の垂壁が待っている。

 4P目スタート        たっくんと新しいザック                岩塔に出ました


 フォローはリッジを行かず、浮石だらけのガラガラ斜面から岩壁を越えてリッジに取り付きますよ。
 凹角に入ったおいちゃんはステミングっぽく登っていましたが、ムーブに失敗していきなりスリップしてこける
 はらっぱも、ここは足が滑りまくり大会なので、たっくんに助けてもらいました。
 

 リッジに上がるおいちゃん ▲ いきなり落  気をつけなくっちゃ
 浮石帯を越えて                リッジ へ
 身体硬くて反れないし                V字を抜けて

ピッチの最後は、古い残置スリングのぶら下がった垂壁です。
右側は少しかぶり気味なので難しそう。
落着いてホールドを探していたら、上から下から指示が飛んできました。
みんなの指示通りに足と手を運ぶと、不思議に抜けられた。

絶対無理と見える岩でも、前後左右身体と岩をうまく使えば、結構登れるもんだ。

要は、重力をうまく利用し、フリクションを最大限に生み出すムーブをすればいい。
理屈は分るんですが 。。。


吹き付ける風は、ますます勢い付いていますね。

 はらっぱ思案中  なるへそ〜
 ここがルートの核心だな          上がってみれば下が見えない
 稲子岳稜線も間近に見える訳で        ▲ 岩塔に立てば、4P目の終了点
 フォローのビレイ疲れたよ〜             ▲ ガルーダコンビ

  【 5ピッチ目 】 20m V

 3ピッチ目の終了点から見上げた時はカッコよく見えた岩塔も、近くで見ると意外と小さい。
 リードは正面のクラックに右足を入れながらクラックに沿って登った。
 クラックの右側のフェースにボルトが2本打たれている。
 おいちゃんは、右端から取り付いた。
 出だしは立っていて登りにくいが、頭上のアンダーホールドを上手く使って身体を引き上げ、左上のホールドを取ることができれば、その
 上は簡単である。
 はらっぱと拓哉は、リードと同じく、クラックに沿って登った。
 ただし、クラッの左側に身体を出し、クラックの角を両手で掴んで左上してから、クラックを乗り越えた。
 風の強い岩塔の上で恒例の握手をし、記念写真を撮ってから、コマクサの保護地となっているザレの斜面を登って縦走路に出た。


                       ▲ 風に吹かれて横になびくロープ (風凄すぎ〜)

最終ピッチは、すぐ目の前のクラックの岩を登るだけになりました。
右前方には稜線が見えていて、岩の右を捲いても行けるようですが ・・・
ここまで登ったんだから、最後までキチッと登ろ。

相変わらず吹きつける風は容赦ありません。
ロープが風になびいて、風下に大きく膨らんでいましたよ。
岩の上に立っていても、飛ばされそうになったりします

 左カンテルート終了点

本間さんはクラックに沿って登りますが、思慮浅いおいちゃんは右の難しいルートに取り付いてた 敢えて困難に挑む姿勢は素晴らしいけどね。
いきなりホールドが見つからず、出だしから速攻ミ〜ンミ〜ン。
たっくんからヒントをもらい、アンダーホールドを見つけて見事にクリアー。

 どぼじで ?          ▲ やりました                 左カンテ完登 v

はらっぱは、たっくんのアドバイスでクラックの左を登ります。
身体を左に振ればクラックがガバになるので、楽に登れるよって。
下はスッパリ切れ落ちた崖なので、アドバイスが無ければ絶対に取らないルートです。
さすが師匠、岩を見る目が違いますがね。

終了点でいつもの握手
お疲れさま〜、ありがとうございました〜。

振り返ると、心地よい絶景が広がっているしね。

 おつかれさま〜

 おっ♪青空で〜す       ▲ ブイブイ 登ってしまえばこっちのもの
 しらびそ小屋とみどり池   ▲ 終了点はコマクサの群生地なので、気をつけて歩こう

ここからはザレ斜面を登って稜線に上がります。
この広場はコマクサの群生地として保護されているらしい(ロープ柵あり)のですが、この時期には葉っぱすらなかった。
でも、気をつけて歩きましょうよ。

強風に追い立てられて、樹林入口の木陰に座ってランチにありつきました。
腹ペコペコ減り過ぎましたよ。

 カラマツの黄葉

さて、ニュウ経由で帰ります。
薄い踏み跡を頼りに、北八ツの森を彷徨いますね。
原生林の中を、右に行ったり左に行ったり ・・・
でも結局、稲子岳山頂はなかった。

樹林越しに山が見えてきて、中山峠からの道に合流するとニュウは目の前ですよん。

 稲子岳縦走路(?)を行く  ▲ ニュウの下にある稲子岳入口 (正規登山道ではありません) 赤布3コ

この頃になってやっと風がおしとやかになり、たっくんは一番高い岩のてっぺんに立って笑顔を振りまいています。
本間さんも、無理やりやらされてたっけ (^^;

 ニュウ山頂のたっくん        ▲ お付き合いだぜ〜
 シルエットおいちゃん         ▲ 白駒池まで帰りが待っている

ここからは天気が良いと富士山や槍・穂高まで見れて360度の素晴らしい眺めらしいのですが、私達は今回もイマイチ。

見えたのは佐久の町や御座山、荒船山などの西上州の山々。
これから帰る白駒池は見えていますね。
頑張って帰ろう。

 あれが妙義だね

ニュウの山頂から、さっきまでいた稲子岳、歩いてきた樹林帯を眺める。
この山頂に登って、稲子岳を眺める人は余りいないと思う。
稲子岳に比べて、天狗や硫黄のたたずまいが立派すぎるもんね。

天狗や硫黄を遮るように、モコッと邪魔をしているだけの稲子岳。
稲子岳の怪しいルートを歩いてきた人だけが、シミジミ眺めるに違いない。
目立たない山です。
クライミングした南壁も、ここからは反対側になるので見えない訳で ・・・

終わってみれば、寒かったけど楽しかったね。

 ニュウ山頂から稲子岳

しかし、白駒池に下る道も歩き辛く、はらっぱは自暴歩きです
みんなも自棄気味でしたね。

白駒湿原を経て、池が見えればあと少しです。
半時計廻りで青苔荘を通って、暗くなる前に駐車場に帰ってきました。

すでに駐車場の係りの人はいません。
もちろん朝もいなかったし。
ワイパーに挟んであったメモ紙とお金を料金箱に入れるシステムです。

 白駒池青苔荘

八峰(やっほう)の湯に浸かって、晩御飯もここで済ませることに。
はらっぱはお腹ペコペコ空き過ぎて、食べたい気持ちが先に立ったせいか半分しか食べられなかったの(珍しい)。

美味しそうに飲むMHさんのビールに挑発されて、おいちゃんも初ノンアルコールビールに挑戦してみました。
ちょっと酔ってんじゃないの(笑)。

 八峰の湯の白樺マスコット


 たっくん達はこのまま川上村に向かい、明日は小川山でクライミング。
 アクシデントもあったけど、とっても楽しい一日でした。
 たっくん 本間さん ありがとう。

 下仁田ICから上信越道に乗ったら、大雨が降ってきた、何で?


 

































 レポ作成に当たり、たっくんから提供された写真をたくさん
 使用しています。
 この場を借りて、お礼申し上げます。


   稲子岳の場所
 この地図は、国土地理院発行の地形図を使用したものである (経緯度線は20秒間隔)

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